■07 HK
「須磨への帰還」

生活に追われて絵が描けない。
描いても、描けた気がしない。
自分で自分を励ましながらも、
出口の見えないトンネル。

そんな時は、
須磨海岸に行けばよい。

昔々、日夜を、幾つかの季節を
ここで過ごしたことがある。
穏やかな潮風の匂いを嗅いだり、
灼熱で火傷したり、
嵐に吹き飛ばされたり、
指がかじかんで、
刷毛も持てなかったりしながら。

分厚い地層のように塗り重なった
ペンキの前を、
数えきれない人たちが通り過ぎて行った。

JR 須磨駅の改札口を出て南側の
デッキから海岸を見渡すと、
口には出さないけど、
ただいま、と言いたくなる。

ここはいわば私のパワースポット
(元気をもらえる場所)なのだ。

ビールが飲みたい
23-07「ビールが飲みたい」喜多秀和
25年前、海岸沿いの駅近くに、
H.R.G.というバーがあった。
いつもBob Marley & The Wailersの
アルバム「Live!」が流れていて、
ここでライムつきのコロナビールを覚えた。
…ということを、
小屋を描きながら思い出した。

砂が入った
22-07「砂が入った」喜多秀和
須磨海岸の景色は、
遊歩道が整備されたりして変わって
しまったはずなんだけど、
雰囲気は変わっていない。
自分が進歩していないだけなのかも。

セリフは忘れた
21-07「セリフは忘れた」喜多秀和
突堤に立つと、
舞台にいるような気がする。
前日に完成した台本を徹夜で覚えて
舞台に出たとたん、
全部飛んでしまう。
目の前の客席は、海。